読切漫画『ミーシア』感想|神の子よりも人間の方が怖い

人を殺して回る神の子ミーシアと虐待によりちょっと壊れてしまった人間ユウマのボーイミーツガール物語かなと思ったら、度肝抜かれるほど救いようのない話でした。『君に届け』かと思わせておいての『デスノート』。夜神月も真っ青。

序盤はミーシアは平然と人を殺す一方で、ユウマは人の常識を持たないミーシアに引いているんですが、最終的には2人の「人間らしさ」が真逆になるんですよね。ミーシアが親しくなったヨーゼフを殺してしまったことで人間らしい情の深さを自覚した時、ユウマは「なんだ、ヨーゼフさんリスト入ってたの」と平然としてる。この時点でユウマのメンタリティは決定的にミーシアより人間離れしてますね。

ミーシアを刺した後、血に染まる自分の服を見たユウマの台詞が「あー…服早よ捨てよ…」。数年共に旅した神の子を刺した感想がこれ。夜神月もドン引きしてるし、リュークも「人間って怖っ」って言いながらりんご食ってる。神の子よりも悪魔的。こういう「本当に恐ろしいのは人外よりも人間だった」展開、興奮しませんか?私はします。人間って面白っ。

台詞の節々が、妙にリアルなのもドラマを引き立ててますね。ミーシアに「君はなんで私についてきたの」と聞かれてユウマが胸中を話すシーン。

『ミーシア』

このつっかえながら、考えながら、自分の気持ちを確認しながら相手に伝えようとする言葉の運びが、現実で話す時と全く同じ。用意された台詞とか校正されて整えられた文章じゃなくて、ユウマの等身大の気持ちが生で出てきてます。リアルタイムでユウマの頭の中で文章が構成されているんだなというのがよくわかるシーンです。小説やドラマよりもリアルに感じます。

ユウマを組み伏せた時のミーシアの台詞も圧巻。

『ミーシア』

内容は人間に対するマウントなのに動揺が隠せてないのがなんとも皮肉。この妙にリアルなどもりが人間よりも人間らしく、ミーシアとユウマの立場が逆転していることを際立たせています。

本作は81ページもあるのですが、その長さを感じさせないほど息もつかせぬ展開。喧嘩両成敗的なバッドエンドにもかかわらず、綺麗なifを最後に想起させることで読者の読了感も爽やかにされてます。17歳が書いたとは思えない怪作にして傑作。永遠に読んでいたいとも思わされました。

少年ジャンプ+編集部の皆さん、吉野マト先生の作品をどうか、週7で掲載してはもらえませんかね。


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