読切漫画『二番目の運命』感想|読了感がポカリスエットのそれ

本当に1話完結の読み切り?読了感良すぎて1クールのドラマを観終わった気分でした。

闘病生活の末亡くなって恋人の渉と離れ離れになったという悲しい過去を持っているにも関わらず、幽霊になって生意気にも図々しく渉のそばで浮遊霊しているまどかと、好きになった人の隣に元カノの幽霊がいるにも関わらずいけしゃあしゃあと渉へのアプローチを続ける京佳のコンビが最高。2人は完全に恋敵で憎まれ口を叩き合うんだけど、なんだかんだまどかは京佳を応援し、最終的には京佳もまどかを応援します。恋敵のくせにまるで悪友のようないい関係。

シリアスとコメディのバランスも絶妙。序盤はまどかと京佳の漫才のようなやりとりが軽妙だし、後半は結局渉はどんな選択をするのか気になってしょうがなかった。最後はプロポーズのネタバレに笑わせられたと思ったらまどかの今生のお願いに泣かされる。そして最後、渉が死んだ後に京佳が長生きする理由が江戸っ子もびっくりの粋っぷり。一生ついていきます、京佳姉さん。

三角関係なのに爽やかなのは3人とも一途だからでしょうか。まどかは幽霊になるほど渉に首っだけだし、京佳も幽霊如きで諦めるほど軽い気持ちで渉を好きになってない。渉もずっと京佳のアプローチを断り続けていたくらいまどかを思っているのが良かった。簡単に渉が京佳のアプローチを受け入れていたら途端に渉の印象最悪になっていたでしょう。死んだら冥土で渉と酒を酌み交わしたいと思えるくらいには渉の好感度が高い。

各所のキャラクターの表情も人間味の塊で非常に良い。「死人が人の恋路に口出すな」と啖呵を切る京佳姉さんの心底うんざりした顔。漫画の続きが読めて嬉し泣きしているまどかの切ない笑顔。「アンタさえいなければ完璧」「同意するわその意見」と軽口を叩いたあとの二人の快活な笑顔。「彼より長く生きてほしい」と最後のお願いをするまどかの泣き顔。「安心して地獄に落ちろ」と言われた時のまどかの未練のない顔。全部が全部漫画とは思えないほど人間でした。「幽霊が成仏する時の未練のない顔」なんて観たことないだろうに作者はどう描いてるんでしょう。想像力が化け物なのか実際に幽霊なのかどちらかでしょうね。

「あの子を呪いのように言わないで」

京佳

本当に言葉というのは呪いとなりうる。特に死にゆく人の言葉は生きた人の人生を強く縛りつける。それが道しるべとなるか呪縛となるかは受け取った人次第。死んだ元カノを思い続ける渉は一途で結構なことですが、まどかを理由にこれからの人生で全女性からのアプローチを断り続けるのかと考えるとモヤモヤしていました。そこに京佳姉さんの喝ですよ。一生と言わず、三生くらいはついていかせてください、京佳姉さん。

最後にまどかは京佳にも最後のお願いとして「渉より長生きしてほしい」と言いますが、この言葉は京佳にとって呪縛ではなく道しるべとなったのでしょう。そしてその道しるべに従ってまどかと渉のために長生きする京佳姉さん、い、粋〜〜〜〜〜〜〜。

私も軽口を叩ける幽霊の悪友がほしい。そして普通に呪い殺されて死ぬ。漫画化した時のジャンルは多分ホラー。是非深夜2時とかに読んでほしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です