「ギャンブルにハマる心」を科学する

人間は万物の霊長として君臨しています。人間はその知能で森羅万象を解明し、道具と科学技術を駆使して他の動物の生存戦略をあざ笑うかのように発展し、ついには地球を制服するに至りました。発達した脳とそれに伴う知能が、霊長である人類の最大の特徴なのです。

しかしそんな人間が、万物の長たる人類が唯一御せていないもの、それがギャンブルです。人はギャンブルにハマると理性的な判断ができなくなります。時には友情も将来の展望も捨て、自ら破滅の道を進むこともあるほどです。

一体ギャンブルの何が、人を壊したらしめるのか。本記事ではその仕組みに迫ります。

スキナーの「サルを完全に壊す実験」

当然ながら、ギャンブルでは勝つか負けるか分かりません。勝って大金を手にすることもあれば負けて大損することもある。それゆえに人々はギャンブルにのめり込みます。

ランダム性と依存性の関係を証明する、ある実験があります。心理学者スキナーが行った「サルを完全に壊す実験」というものです。

サルAには押すと必ずエサが出てくるボタンを、サルBには押すと餌が出たり出なかったりするボタンを与えます。すると、サルAは自分の空腹に応じてボタンを押すようになりましたが、サルBは満腹だろうと狂ったようにボタンを連打するようになります。

その後、サルBのボタンの餌を排出する確率をだんだん下げていき、いずれ0%、つまりボタンをいくら押しても餌は出ない設定にします。それでもサルBはボタンを押すことを止めません。少し移動して餌を探したほうが効率がいいにも関わらず、サルBは延々とボタンを押し続けます。サルBは完全に壊れてしまいました。

ギャンブラーの誤謬

「3回続けて負けたんだからさすがに次は勝つだろう」
「5回も赤が出たなら次は黒が来そうだ」
「連続でブラックジャックは来ないだろう」

というような、なんの根拠もない予想のことです。もちろん確率的には全て同じ。

私も数字の上では同じ確率だと知っているのにそれまでの出目を思いっきり参考にしてました。机上の理論と実際の経験には天と地ほどの差があるのだと実感。

ハウス・マネー効果

「500$勝ってるから10$じゃなくて30$賭けよう」

のように、勝っている時にリスクを厭わなくなってしまう効果です。

ギャンブルで勝ったお金は泡銭ですからね、ほとんど紙切れみたいなもんです。簡単に消費してしまうのも納得。

帳消し効果

ハウス・マネー効果の逆です。つまり、負け分を取り戻そうとしてハイリスクな勝負に出てしまう効果のこと。

ハウス・マネー効果と帳消し効果を合わせると、人間は勝ってても負けててもハイリスクの勝負に出てしまうということです。冷静なのはギャンブルを始める前だけ。常時狂人。

サンクコスト効果

ギャンブルで負けてる時、「これまでこんなに負けたのだからそろそろ勝てるだろう」なんて思って引くに引けなくなる心理効果を「サンクコスト効果」と言います。

反対に、ギャンブルで勝っている時はまだ勝てると思ってギャンブルを辞められなくなることもあります。つまり、勝っても負けてもギャンブルを辞められないということです。

止め時を間違うと、無限永遠恒久悠久際限無しギャンブラーマンとして一生を終えるかもしれません。

確証バイアス

ルーレットで赤、赤、赤と続いた後、赤に賭けた人は「こんなに赤が続いたんだから次も赤だろう」と考え、黒に賭けた人は「こんなに赤が続いたんだからそろそろ黒が来るだろう」と考えます。この、自分に都合の良い考えを信じたがるバイアスが確証バイアスです。

現状維持バイアス

隣の卓や隣の台の方が勝てそうにもかかわらず、自分がプレイしている場所から動けないのは「現状維持バイアス」によるものです。現状維持バイアスが働くと、現状を変えることで得られるメリットより現状を変えることで起こるデメリットの方が大きいと感じてしまいます。

認知的不協和

「負けたけど沢山遊べたから結果オーライ」と考えるのは「認知的不協和」が関係しています。なんだか専門用語っぽい難しい用語。この例では、「ギャンブルに負けた」という認知と「ギャンブルは楽しい」という認知が矛盾、すなわち認知的不協和を起こしているため、「沢山遊べたから良い」という認知を追加することで認知的不協和を正そうとしている、、、のだと思います。

なんかわけ分からなくなってきた。認知的不協和っていう用語もゲシュタルト崩壊を起こしそう。難しい専門用語は教科書の中だけにしていただきたい。

光や色による視覚的効果

ラスベガスは街もカジノもとにかくド派手。バカみたいに大規模な噴水ショーやアホみたいにギラついてるイルミネーション、深紅や黄金の装飾が施されたカジノ等、どこを歩いても目が痛い。

これらは実は意図的なもの。人々の視界を刺激することで賭博心を刺激しつつ、眠くならないようにするためだとか。

科学的にも色と気持ちには関係性があるとされていて、赤色や黄色は興奮や集中、あるいは幸福感を促すそうです。ラスベガスの街に入った時点でラスベガスの策略にハマっているんですね。

チップと現金の心理的な重さの違い

カジノでは現金ではなくチップを使って賭けます。

初めはチップを現金に換算して冷や汗ダラダラ流したりしますが、ギャンブルを続けていくとチップが現金に見えなくなっていきます。

チップは現金とはかけ離れたおもちゃのような見た目。賭博に目が眩んでいる人間には、100$と書かれているチップが本当に100$の価値を持つとは思えなくなってしまうのです。

さいごに

戦争しかりギャンブルしかり、霊長たる人類を苦しめるのはいつだって人類が作ったものです。その仕組みを知らなければ「仕組みを作る側の人間」に敗北を期してしまうでしょう。

ですが私はどうやらギャンブルには向いていないようで、今年ラスベガスに行った際も10$の勝負で心臓が破裂しそうなほど緊張しました。私にはギャンブルにはまるのは無理らしい。

誰かギャンブルのハマりかた教えてください…。

参考

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